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ヒマラヤスギ雑記

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レオナール・フジタ展@神戸

先日、『藤田嗣治 手しごとの家』(集英社新書 ヴィジュアル版)を読んだ後、神戸大丸ミュージアムで藤田の展示が開催されることを知った。本で紹介されていた、藤田手作りの愛らしい小物やアトリエの様子も展示されるようなので、早速行ってみる。大きな壁画の展示場所は、天井高がもう少しあったらいいと思う。また、後ろに下がって観ようにも、空間が小さいので下がりきれなかったのが残念。その他の展示は、見やすかった。
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今回の展示でわかったことは、藤田嗣治(フランス名:レオナール・フジタ)が本当にフランスで愛され尊敬されていたということ。展示のメインは、幻の大作とされた壁画『ライオンのいる構図』『犬のいる構図』『争闘Ⅰ』『争闘Ⅱ』ならびに「平和の聖母礼拝堂」の壁画のためのデッサン、スケッチ類、その他スケッチ(ステンドガラスのためのスケッチ、ガラス見本、建築家のアイディアスケッチなど)である。特にランスにある「平和の聖母礼拝堂」は、藤田の集大成といえるもので、藤田が理想とする礼拝堂のイメージを忠実に再現したものである。藤田のための礼拝堂なのだ。

藤田は、200平米ほどの壁面に、独りでフレスコ画を描き、建築家や職人に任せる箇所についても細かく指示をだしている。聖具室のドアの材質、デザインを細かく指定する一方、藤田の考える聖なる場所についての世界観も頻繁に建築家に手紙などで伝えている:「永遠不変な作品でなければならず、つつましく、それでいて簡素でいて威厳があり、人が何度でも訪れたくなるような安らぎを覚える場所」(図録81ページ)これが藤田のイメージである。

この礼拝堂の建築家、モーリス・クロジエは藤田の言葉の具体化に心を砕き、シャンパーニュGHマム社の社長であるルネ・ラルーは敷地を提供し、建築費用の全額を藤田のために負担した。このプロジェクトに着手したとき、藤田は79歳であった。この年齢で、すでに名声を勝ち得ていた藤田の、さらに芸術を高めようとする姿勢が周囲の人々を動かしたのだ思う。

会場では壁画を展示することはできないので、壁画のための習作を展示し、礼拝堂の映像を流していた。日本から来た一人の画家が、フランスの才能のある人々をここまで動かしたという事実に驚くと同時に、日本における藤田の評価はまだ十分にはされていないと感じる。藤田の趣味のいい暮らしぶりも魅力的だが、ルネサンスに西洋美術のルーツを学びながら西洋と東洋を融合させることで生み出された絵画表現、西と東の両方を知る藤田でないと確立できない絵画表現こそが魅力だと考える。

藤田の絵画のどこが東洋的かと考えてみると、私は「抑制」にあると思う。たとえば『争闘』は、肉体美を誇る裸の男性が、大勢描かれているのだが、油っぽくないというか、植物的に見える。あの透明感のある「乳白色の肌」のおかげもあって、くどくないのだ。日本画的な印象も受けた。ルーベンスに見られる肉感的な表現とは異なる。私には植物のようにも見え、あれだけ裸体の人間が描き込まれているのにもかかわらず、音が感じられず、静寂で抑制された印象を受けた。けれども激しさも確かに存在していて、なんともいえない魅力を放つ絵だと思った。

期待していた以上に、楽しめた展示だった。藤田の遺した手仕事作品は、本当に持って帰りたいくらい素敵だった。藤田の家にあった六角形の鏡が展示されていたので、思わず覗き込んでみる。藤田が何度もこの鏡を見ていた光景を思い浮かべると、不思議な感じがした。
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(上:藤田のステンシルモチーフのピンブローチ。傘と動物の上に鳥が乗っているもの。母もおそろい。帽子につける予定。下:ステンシルモチーフの絵葉書と一筆箋。)

ショップで、図録と藤田のステンシルからモチーフをとったピンブローチを二つ、ステンシルデザインの一筆箋、絵葉書を買ってしまう。その後「あげ菜っぱ」( 「菜っぱ」の姉妹店。旬のお野菜を使った和食。椎茸のスープ美味。両店とも大人気で、外に行列が・・・)でお昼を食べて、そごうでキルト展(招待券をもらったので)を観て帰宅。




年配の女性がとにかく沢山いらしていた。藤田の展示よりも人が多い。キルトには興味がないのだが、三浦百恵(山口百恵)さんの真っ白のキルト作品は素敵だった。あれ、欲しい。

キルト作品の横には「作品には触らないように」と注意書きを書いた紙が貼られていたが、来場者の大多数(主に中高年女性)が、手で裏返したり、つまんだりして触りまくっていた。それを見て母とびっくりする。熱心なのはいいけれど、あかんやろー。
by himarayasugi2 | 2010-01-09 10:24 | アート | Comments(0)
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