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ヒマラヤスギ雑記

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お国言葉を隠す人

M君と初めて話をしたとき、大学の近くで一人暮らしをしていてバイトがなかなか見つからなくて大変だということを言っていた。「どちらのご出身?」と尋ねたら、なにやら浮かない顔をこちらに向けてきて、「一生懸命直して、隠しているんですけど、関西の人間じゃないってわかっちゃいますか」と言うのだ。M君が隠そうとしているのは、出身地の訛りだそうで、それを聞いて「隠す必要ないやん、出身の言葉って素敵やよ」と言ったら、関西に来て言葉でバカにされて傷ついたという話をしてくれる。

「お前の話す言葉はなにいうてるかわからん、ってからかわれるんですよ」と悲しげだ。M君は強面なのだが、お国言葉で話しだすと、めちゃめちゃチャーミングな青年になるのだ。A嬢と一緒に「わからんって言われたら、出身地ではこういうんだって教えてあげればいいやん。お国言葉をからかう方が悪い!」と激しくM君を励ますと、「関西の女の子は、はっきりモノ言うと思ってたんですけど、こういうときに、はっきり言ってくれると嬉しい・・・で、すね」とはにかみながら小さな声で言う。その後M君は、お国言葉全開でいろんな話を熱く語ってくれて、焼酎をがんがん飲んで、なんだか楽しそうだった。

私はM君ほど繊細ではないけれど、気持ちはわかる。結婚後生まれて初めて関西を離れ北関東に移ってすぐ、町では関西弁は話にくいなぁとちょっと窮屈に感じ始めていたからだ。エアコンの取り付けにきた電気屋さんにお茶を出したら、「奥さん、関西出身なの?関西の人はいつまでたっても関西弁が治らないから困るんだよねぇ」と言われて出したお茶を下げようかと思ったほど腹が立ったこともあった。

東京のオフィスで働くようになったときに、マネージャーに「メバチコができたみたいで、昼休みに眼科に行ってきます」と伝えたら「メバチコ」が通じず大笑いされたことがある。「なんだか、メバチコって可愛いね、女の子の名前みたいだね」と温かく尊重してくれるのが嬉しくて、眼科でもメバチコと言ってみたけどやはり通じなくて、それがまた、私だけが知っているという妙な優越感もあって、通じないことに屈折した喜びを感じてしまう困った私だった。この話をM君にしたら、「で、結局メバチコってなんですか」と言うので「モノモライのこと」と答えると、M君の出身地では「メモライ」と言うと教えてくれた。その場に居合わせた人で「へー」とか「ほー」といいながら、しばしお国言葉披露で盛り上がった。
by himarayasugi2 | 2010-05-30 09:09 | 雑感 | Comments(0)
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