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ヒマラヤスギ雑記

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傍にいてくれるだけでいい。

我が家は坂の上にあるので、この時期は帰宅した時点で、汗だるまになっている。喉が渇いて、服は汗でべったりで、足もがくがくなのだ。昨日も夕方ふらふらになって帰宅して、ドアを開けると、ケンがプーを咥えて、頭をぶんぶん振って玄関で「お帰りなさいの舞」を踊ってくれた。疲れもふっとぶ瞬間である。ああ、家に帰ってきた、嬉しいと毎度思う。すぐに夕方の散歩に連れて行った。

近くの公園に、柴犬の老犬を散歩させている女性がやってきた。時々お見かけする方である。犬にも見覚えがある。年はいっているけれど、目は両目も真っ黒で、可愛らしい無邪気な顔の犬だった。女性が話しかけてくれて、なんとなくケンが我が家にやってきた理由なども話をしたら、「まぁ、よかったわね、この辺りは家族を失った犬の新しい家族になってる人多いのよ。特に阪神大震災のときに、飼主を失った犬を保護してそのまま飼ってる方がね。でもその頃のワンちゃんは、殆ど亡くなったけれど」と教えてくれた。そして、彼女の連れている犬は、阪神大震災のすぐ後にその女性の実家の近所で生まれた仔犬をもらってきたという。そのチップという柴犬は14歳、もうすぐ15歳になるおばあさんなのだ。

チップがその女性の家にやってきた経緯は、やはり阪神大震災が関係あった。震災当時、6歳だったその女性の息子さんは、クラスメートのうち何人かが震災で亡くなったことに強い精神的ショックを受けたそう。そして息子さんはとうとう眠れなくなったという。いろいろ診てもらったりしても眠れない息子さんを、ご家族はとても心配されていた。ある日、息子さんがその女性に「お母さん、僕、犬が子供部屋にいたら眠れると思う」と自分から言ってきたそう。女性は、犬は飼う予定はなかったけれども、息子が自分からそう言うのならと思って仔犬のチップをもらってきた。「で、チップちゃんは息子さんと一緒に寝たのですか?」「初日から息子がチップと寝るというので、息子の部屋にチップの場所を作ってやってからずーっとチップは息子の部屋で寝ているのよ。息子もチップがきた日から眠れるようになったの」チップは、いまや息子さんの部屋は自分の部屋だと思っているらしい。そしてチップは20歳を過ぎた青年と、今も一緒に寝ている。

友人を震災で失った6歳の男の子が受けたショックは、私の想像を超えている。けれども、犬と一緒だと眠れると思う、と母親に言う男の子の気持ちはなんとなくわかる。犬が傍にいるだけで安心できる。チップは、立ち話をしているその女性の顔を笑顔で見上げて、「早く行こう」と言っているようだった。
傍にいてくれるだけでいい。_c0221299_8223429.jpg
(ケンは、満腹になったときとか、機嫌がいいときとか、遊んで欲しいときは、プーを咥えて室内を行進する。)
by himarayasugi2 | 2010-07-06 08:23 | | Comments(2)
Commented at 2010-07-07 23:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by himarayasugi2 at 2010-07-07 23:48
鍵コメント@23:32どん、
うん、知ってる、知ってる。チップと会ったことあるんとちゃう?
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