昨日、病院へリハビリのために行ったら、リハビリ室の受付に見慣れない顔が立っていた。坊主頭で、上下を水色のジャージ、白い運動靴を履いた若い男性である。新人スタッフなのかなと思って名札を見たら、社会体験週間ということで近所の中学校の生徒が体験中です、という旨が書いてあった。ということは、彼は中学生なのか。どうりで若々しいっていうか、幼いと思った。この中学校が数年前からこういった社会体験を、コミュニティの協力を得て学校カリキュラムで実施していることは知っていたのだが、実際に働いている現場を見たのは初めてだった。病院にも来るんだ。
彼が受付を担当して、リハビリカードを順番に並べたり、待合の椅子を整えたり、動作に介助を必要とする人の手助けをしたりと、こまごま仕事は与えられているようだ。私が受付に近づいたら、大きな声で「おはようございます」と挨拶してくれる。朝のリハビリルームは、お年寄りの患者さんが多いのだが、突然孫くらいの年齢のスタッフが介助してくれたり、声をかけてくれたりするので、なんとなくみな嬉しそう。別に彼がいなくても仕事が滞るって感じではないけれども、場の雰囲気が華やぐような、そんな感じがした。存在するだけで和める、みたいな。
今は閉店してしまったけれども、時々近くの大学の図書館の行き帰りに寄っていた60代の女性が切り盛りする小さなカフェでもその話題が出たことがあった。店主の女性が、「うちにも中学生がきたの。カフェやりたいって。」と話す。そのカフェは常連しか来ないカフェなので、ひまなときは、すっごくヒマらしいのだが、そういうときは「おいしいコーヒーの淹れ方」を伝授したり、あと中学生とその女性で珈琲を飲みながら「内緒話」をずっとしていた、とすごく楽しそうに話してくれたのだ。自分のおばあちゃんくらいの年齢の女性と、孫と祖母という関係以外で、こうやって仕事を教えてもらいながらお話するなんて、とても素敵な体験だと思う。いいなって思いながら聞いていたら、隣の女性のお嬢さんは「消防署」勤務を希望したそう。女子中学生の消防署希望者は彼女だけだったので、とても可愛がってもらえたし、楽しかったとお家でも話していたそう。「いいですねぇ、そういうの私もやりたかったです」って私が言うと「でしょー!」って返事が返ってきた。けれども、一部の父兄からは毎年、高校受験の妨げになるから、そういう授業のない社会体験週間は廃止して欲しいという声があがるそうだ。なので、私はとっくにこの社会体験週間はなくなったとばかり思っていたので、整形外科の坊主頭は、嬉しいサプライズだった。
高校受験はそりゃぁ、大事だと思う。でも、こういうことって中学のときに体験しなくて、いつするのっていうくらい貴重な経験になる。私が中学生だったら、警察署か獣医さんのところに社会体験に行きたいなとリハビリの帰りに考えていた。
今日も、坊主頭に会いにリハビリに行く予定。