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ヒマラヤスギ雑記

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最初は犬が怖かった男

夫は小さいころは犬が怖かったらしい。それに大人になってからもさほど興味もなく、実家を出てから、実家の両親が飼いはじめた犬もたまにしか会わないから、かわいいとも思わなかったとか。最初、犬の里親になろうよと話を持ちかけたときも、渋い顔だった。「毛が飛び散るから嫌だ」とか「旅行にいけないやろ」とかとか。それになんで成犬を引き取るのか、仔犬を買ったらいいじゃないかとか、結構反対されていた。が、里親募集のサイトのちょっといじけて、作り笑いをしている寂しそうなケンの写真を見て会ってみてもいいかなと思ったらしい。

夫は、最初犬という生き物とどうやってコミュニケーションをとるのか、ちょっと戸惑っていたようだった。でも、ケンもそれは同じだったようだし、私も含めて2人と一匹は互いに様子を見ていた。「保護犬にはちょっと人間不信になっているところもあるので、テンションは低めで、犬のほうから近寄るまではじっと我慢してください、犬が、この人たちは大丈夫と思ったらそっと寄ってきます、急がないでください」と、以前見学に行った別の動物保護団体のスタッフの方が言っていた。そうやって最初の1ヵ月は静かに交流していたのだ。ケンが家に来て1番そわそわしていたのも夫だった。会社からのメールに「ケンはどうしていますか」と一行だけ書いてあったり、随分気にしているようだった。そして2年たち、夫は毎夜、毎夜酔っ払うとケンにいっぱい話しかけて一生懸命である。「ここまで可愛いと思った犬はいない」と夫は言う。そして先日、写真などをTシャツやエコバッグにプリントしてくれる店の前を通ったとき、柴犬の写真をプリントしたTシャツがサンプルで飾ってあるのが見えた。
「ケンちゃんの写真でTシャツ作って着ようや、みんなで」
「みんなって、誰?」「ボクと君とXちゃん(妹)と実家の君の両親」
「・・・着るかなぁ、ペアTシャツなん?」「おお」
何が悲しゅうて四十路を過ぎて家族で柴犬のペアTシャツを着ないといけないのか、と思いつつ、頭の中では「どの写真がいいかなぁ」と考えている自分がいる。でも実際にあったら着るかなぁ。ケンを連れて散歩するときにそんなの着たら、笑われるだろうし。エコバッグにケンの写真をプリントするほうがまだ使えそう。で、Tシャツは家で着るのだ(って結局着るんかい)。
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(Tシャツだったらこれかな・・妄想中)

犬をはじめとして動物と暮らすことに一切興味がなかった夫は、ケンと暮らすようになってからケンだけでなくて他の犬にも興味を持つようになった。いつも繋がれっぱなしで寂しそうで汚れた犬を気にかけ、また外で可愛らしい犬を見たら家に帰って報告してくれる。「今日、めっちゃかわいい犬がおじいさんと散歩しとった。でも、ケンのほうが可愛いけどな」と何度報告してきただろうか。夫を見ていると、目の前の犬に愛情を注げるようになると、他の犬のことも気遣えるようになるのかなと思う。
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(エコバッグだったら、このへんとか・・・妄想中。)

「ケンちゃん、かわいいなぁ、なんでそんなにかわいいねん、ってかわいい、かわいいって言われていい気になったらあかんで、かしこいなぁ、ケンちゃん」と、もはや意味不明。でも話しかけ続ける夫だった。
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by himarayasugi2 | 2011-01-25 00:02 |
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