夕方用事を済ませて家に帰って、PCを立ち上げてメールをチェックした。午前中に出かける前にチェックしてそのままだった。一通、携帯からメールが届いていて、件名もないし、見たこともないアドレスからだったので、一瞬「ウイルス?」とか「スパム?」とかって思いつつおそるおそるクリックしたら、同じゼミの女の先輩、Tさんからだった。
Tさんは前の日のゼミの飲み会で「明日、最終面接なんですよ」っておっしゃっていて、その結果を教えてくれたのだ。彼女は飲み会の二次会を、途中で翌日に備えて帰られたのだが、帰り際に私が「明日、頑張ってください」って声をかけたことは覚えている。Tさんは、無事内定を取ったと知らせてくれた。Tさんは真面目で、きちんとした人で、ゼミの発表も細部までいつもつっこんでリサーチされている。また研究テーマもとても彼女らしいし、彼女しか出来ない緻密さが要求されるテーマなのだ。しかし、院卒での就職は学部卒以上に大変だそうで、Tさんも昨年はずっとリクルートスーツで講義を受ける姿をよく見かけた。
ケンしかいないリビングのパソコンの前で思わず「よかったー」と声を出す。本当によかった。先生からTさんの修論がすごくよい内容だと言うことは伺っていたし、なんだかTさん、内定も取っていいことづくし。「おめでとうございます!」とすぐに返信をした。それから、A嬢は知ってるんかいなと思って一応「知っているかもしれないけど、Tさん内定取ったんだって」とメールをしておいた。すぐに「私にもメール来てましたー、よかったですー」と強烈にカラフルな絵文字だらけのメールが返ってきた。Tさんが内定を取ったこともそうだけど、Tさんがそれをすぐに教えてくれたことが嬉しかった。
ゼミの飲み会の席で、先輩のTさん(こちらは男性)が「僕と研究テーマが重なるところが多かったから、僕が学部のときから記録していた参考文献リストをお渡しします、よかったら参考にしてください」とコピーをくださった。何ページもあって、小さな字でびっしりと文献名が書かれてある。図書館の蔵書については資料番号と、本のある場所まで明記されていた。さすが図書館の主Tさんである。お礼を言ってA嬢に見せびらかす。
昨年の4月に入学して、若き先輩ができた。入学当初、ゼミに溶け込めるのか心配だった。でも今は心配していたことは忘れている。というのは、修了式後にサプライズでゼミの先輩にお花を渡す打ち合わせをA嬢としているとき、寂しいなぁと思うから。もうお別れなのだ。先輩達はそれぞれの道に進まれるのだが、みな今の大学を去ることは決定している。春に感傷的になるなんて、一体何年ぶりだろう。そうさせてくれる学生生活はなかなかいいものだと思った。