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ヒマラヤスギ雑記

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情報を盗む人

NHKの『追跡!A to Z』を視聴した。トピックは企業における情報流出について。あるITベンチャー企業において、実際に会員名簿が流出した事件を中心に番組は構成されていた。犯人は派遣社員の20代の男性で、その企業の顧客(?)名簿を50万円で名簿業者に売って姿をくらましたのだ。番組によると「犯人」といっても、現時点においては情報を流出した人物は刑事責任を問われないらしく、逃げおおせたらそれですむ。情報を盗まれた企業は泣き寝入りというわけである。名簿が外部に流出したIT企業の規模は小さく、事件後の対応が続くことによる心労で10人の社員が辞めたとのこと。この企業は、派遣社員に名簿にアクセスできるパスワードを与えていた。NHKの取材班は、この名簿を流出させた元派遣社員と接触し取材を行った。車検代やら生活費のために、この元派遣社員は50万円で名簿を売ったのだ。

非正規雇用である「派遣社員」だから、さして罪の意識もなく名簿を持ち出したのかといったらそうとは限らない。フランスのルノー社では、幹部社員が電気自動車の情報を中国に流した疑いで解雇されている。また、他にも日本企業の技術者で、アジアの企業に技術情報を引き渡し、倍の年収でアジアの企業へ転職した人もインタビューに応じていた(この人はインタビュー時点で既にアジア企業を辞めている)。こういう例を見聞きすると、良識や良心に訴えて情報流出を阻止することはかなり難しいと感じる。結局は物理的に持ち出すことが困難な仕組みを構築したり、外部に監視を委託したりといった手段をとらざるを得なくなる。冒頭のITベンチャー企業でも、事件後は名簿等の情報にアクセスする人数を減らし、社員の動向を監視する「監視役」を置くこととした。が、社長がこのことで情報の流出は防げても、以前1日で終わっていた仕事が1週間からそれ以上かかるようになって、このままやっていけるのかといった不安を漏らしていた。当然だと思う。

翻訳業務をオンサイトでやっていたとき、単発である企業に1週間単位で2度ほど仕事に行ったことがある。業務はある資料を期限内に訳すこと。オンサイトでこういった業務を行うことは多く、色々な企業に出入りしたことがあるが、この企業は特に情報管理に厳しかった。7,8年前だったが、業務を行う部屋は小さく仕切られていて、その部屋からトイレに行くにも入退室管理用のカードをリーダーに読ませないといけなかったし、コンピューターのアクセスログは全て記録され、アクセスレベルも厳しく決められていた。また、印刷した紙を、その日の退社時に社員の目の前でシュレッダーして帰るといったルールもあった。今考えれば、それくらいして当然だなとも思う。3年ほど前に一月ほど出入りした企業では、上記のセキュリティに加え、「印刷が出来ない」となっていて、これは相当厳しかった。全てを画面だけでチェックするのは目がとても疲れるのだ。同業者はみな机の上に目薬を2,3種類並べていたことを記憶している。

この番組の後、ニュースで京都大学の二次試験で英語と数学の問題の一部が、試験時間中にネットの質問掲示板に書き込まれていたと伝えられた。要は答えを教えて欲しいと携帯から「誰か」が書き込んだということ(*1)。「誰か」はおそらく受験生だと思う。試験時間中ならその可能性が高い。これは企業の情報流出とは少々異なるけれども、結局はこういったことに対するハードルが低いということ。現在、大学側は調査を行っているらしいが、携帯の持込自体を禁止しない限りいくらでもやる人はいると思う。

あまりに簡単に価値のある情報を入手し、転送し、転売することが可能となってしまったため、心理的抵抗は少なくなった。クリックひとつなのだ。それに、番組がとりあげた企業の情報流出などは、ハッキングなどといった高度なテクニックではなくて、USBにデータを移して持って帰ったのだ。こういったことがいかに恥ずべきことかといったことをいくら説いても、直接の抑止にはならない。情報の流出は、流出のテクニックの多様化が原因というよりは、結局は情報を盗む人の存在である。最終的に24時間監視社会となっていくのではないかという言葉で番組は締めくくられた。

情報管理から話は外れるが、ご主人が数年前に開業されている友人と話したとき「どんな業種でもそうだけど、信頼できるスタッフを見つけることが1番大切」と言っていて、今回のドキュメンタリーなどを見ると、それには納得。

*1:これが本当に受験生の仕業だとしたら、せこすぎる。こんなのが身内にいたら、はりたおす。
by himarayasugi2 | 2011-02-27 08:53 | 雑感 | Comments(0)
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