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ヒマラヤスギ雑記

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長い間追いかけていたサイト

東京・横浜時代、主にオンサイトで翻訳をやっていたとき、その関係で検索して見つけたサイトがある。暫く読んですぐにわかったのは、このサイトの管理者は同年代くらいの語学専門部門のスタッフの女性で、どうやら当時私がお世話になっていた企業のビジネスパートナー企業が、勤務先のようだった。その企業なら知り合いが通訳として働いていたし、そこからの書類もよく来ていたので、知りあいの知りあいの知り合い、くらいかもしれないな、と親近感を持ったのだ。

サイトは、知的な文章で前向きに日々のことを中心に綴られていた。ご自身で作られたジャンル別の単語帳もアップしていたし、私も時々その単語帳コーナーは覗いていた。私は「その他大勢レベル」のオンサイト翻訳者の1人に過ぎず、 そしてその状況を打開しようとも思ってもおらず、現状維持さえできればいいという程度だった。ネット越しに垣間見える彼女の様子は、そんな私にとって眩しかった。

彼女のサイトを読むようになったのは、遅くとも2004年か2003年ごろから。もしかしたら2000年から読んでいたかもしれない。あまりに長い間読んでいたため忘れてしまった。安っぽい自己啓発書みたいな内容ではなく、彼女の書く文章には、いつも自分自身を客観的に見つめる視点の存在があった。そして、今自分のすべきことは何か、という問いを常に持っているようだった。決してそれはよくある「自分探し」とか、そういったものではなく、携わっている仕事にベストを尽くした上で、さらにやるべきことはないだろうかと考えているような印象を持った。落ち着いた冷静な文章から、キャリアウーマンというよりは哲学者といった感じを受けていた。

いつごろか忘れたけれども、ほとんど更新されない期間があった。そのときでもなんとなくブックマークから外す気にはなれず、思い出してはアクセスしていた。そのうち日記が更新されて、彼女がよく知られている外資系企業のマネージャーへとヘッドハントされたことを知る。こういう人がヘッドハントされるのだなと、おおいに納得したのを覚えている。新しい職場の様子も、相変わらず客観的に分析しながら、勉強会にも積極的に出席し、本当に「バリバリ」働いているといった感じだった。ただ長年この人の文章を読んできた者の感覚として、珍しく愚痴っぽいことも書いたりしているなとは思っていた。

そうしてまた更新されない期間が訪れる。このときは、まったく更新しないのではなく、月に数回、読んだ本の箇所を引用しながら簡単にまとめて更新する、といった形式であった。彼女がよく書いていた仕事を中心とした日常には触れられることはなくなっていた。引用された文章などの内容から、彼女は再び考えているのだということがなんとなく伝わってくる。

最近更新されなかった事情をサイトを通じて私は知った。彼女は考えた末におそらく最後の転職をしていた。現在の転職先の業務の詳細については伏せるけれども、彼女は心から自分の選択に満足していることはわかる。自分のミッションを見つけて自然にそこへ行ったというように映った。

現在の職についてから、彼女はサイトで本名と顔写真と勤務先を公開している。長い間文章しか知らなかった人の顔を見るというのは、不思議な感じである。ああ、こういうお顔の方だったのだと。そして彼女は今、転職に伴って東京を離れ、関西在住となった。またまた親近感を一方的に持つ。

今後も彼女のサイトは定期的にアクセスするけれども、今までどおりひっそりとディスプレーの向こうから読むだけである。長い間に私の大切なサイトになっていた。
by himarayasugi2 | 2011-07-20 08:22 | 雑感 | Comments(2)
Commented by 江草乗 at 2011-07-20 09:26 x
今年から非常勤で同じ学校に勤めるようになったかなり年配の方から、「朝日新聞に昔よく投稿されてましたよね」と声を掛けてもらってびっくりしました。自分の文章を読んでくれていて、そして覚えていてくださるというのはとっても嬉しいことです。ヒマラヤスギさんもいつかその方に「ずっと読んでました」と伝えてみたらいかがですか?
Commented by himarayasugi2 at 2011-07-20 14:21
江草さん、

>自分の文章を読んでくれていて、そして覚えていてくださるというのはとっても嬉しいことです。
そうですか、そうだといいな。一度くらいは「読んでます」とコンタクトをとろうかと考えたのですが、勇気がなくて。でも、嬉しいと感じてもらえるのでしたら、勇気が溜まったところで、行動を起こしてみようかなと思います。背中を押してくださり、ありがとうございます。
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