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ヒマラヤスギ雑記

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はじまりのうた

映画『はじまりのうた』を見に行った。ラジオですごくいいとDJが話していて、それが、宣伝用のコメントでなくて、DJが心から気に入っているようだったことが決め手である。

以下、公式サイトに書かれている以上のストーリー内容には触れていない(と思う)。感想が多い。ほんとのネタバレは、長くなったこともあって、最後に畳んだ。

ストーリーは、シンプルである。ミュージシャンの恋人の浮気が原因で別れた、同じくミュージシャンの女性が、会社を解雇され妻とも別居中の「元敏腕音楽プロデューサー」と出会い、アルバムを作る。二人ともお金がないので、ひと夏をNYのあらゆる街角で、仲間を集めて録音してゆく。アルバムが完成したとき、それぞれの人生がまた輝き始めるというストーリーである。俳優も、撮影も、演出も、脚本も、そして最も大事な音楽も、映画を構成するもの全てが、若々しくて、温かく、気が利いていて、ほとんどの人が「観てよかった」と思える作品だと思う。人生の映画ベスト3には入らないかもしれなくても、友達とかに、「よかったよ」って気軽に勧められる、素敵な映画だった。昨日観たところだけど、もう一度すぐ観たくなった。

主人公のミュージシャンの女性を演じるのは、キーラ・ナイトレイ。彼女を初めて観たのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』だった。クラッシックな美貌の正統派美人である。昔のヘレナ・ボナム・カーターみたいに、イギリスの文学作品の映画化では、真っ先にキャスティングされるような、品のある女優だと思う。その彼女が、無名のミュージシャンで、恋人に裏切られて、という役を演じるのだけど、すごくよかった。美しいけど、ボーイッシュで、さばさばしていて、気取らず、自立したかっこいい素敵な女性なのだ。男前って感じ。歌声も雰囲気があってよかった。服装も、ボーイフレンドフィットのダメージデニムに黒いタンクトップとか、白のノースリーブとか、赤いプリントのノースリーブのワンピースとか、シンプルで、普通の(でもノースリーブが多い)服なのだけど、素材(もちろん着る人という意味)がいいから、とてもスタイリッシュだった。ラストシーンでは、何か吹っ切れたような笑顔で、NYの夜を自転車で駆け抜けてゆくのもよかった。彼女は、プロデューサーとどんどん親しくなってゆくのだけど、わきまえていて、彼が家族ともう一度再生できるように、さりげなくアシストするのだ。そういう、外見も中身も清潔感のある役がはまっていた。

また、彼女を裏切る恋人役は、ロックバンドのマルーン5のアダム・レヴィーンが演じていた。さすがだと思ったのが、ライブシーンである。おそらく観客はエキストラだと思うけど、素でノリノリだった。レヴィ―ンの透き通るような声で、畳みかけられると、わぁーっと盛り上がるのだ。ああいうのは、いくら俳優がミュージシャンを演じていてもなかなかあそこまでいかないんではないだろうか。レヴィ―ンは、ミュージシャンで、ステージのカリスマであることを思い知る。曲もまたいいのよねー。

あと、レコーディング風景もとてもよかった。地下鉄の構内での録音、警察が追いかけてきて慌てて撤収、路地で子供のコーラスをいれての録音に、NYのアパートの一室での録音などなど。でも、なんといっても、NYのエンパイアステートが見えるビルの屋上での録音シーンはよかった。見ていて、幸せな気持ちになる。プロデューサーの別居中の妻と娘も立ち会うのだが、娘がギターで演奏に少し参加する。そのギターが、簡単なフレーズだけど曲を引き立てていてよかった。とにかく、あのシーンと自転車のシーンは大好き。

アルバムに参加するバックミュージシャンの設定も味があって好き。特に、バイオリニストとチェリストの二人!4歳のときからバイオリンを弾いている天才に、有名音大のエリートチェリストが、プロデューサーに頼まれてレコーディングに参加するのだけど、最初は硬かった二人の表情が、レコーディングが進むにつれて、楽しそうになってくるのがいい感じ。バイオリニストは、屋上録音では、踊りだしたし、「前金を払えないけど、いいか?」という問いに、チェリストは「ヴィヴァルディ以外なら(OK)」という、渋い承諾の仕方をしてくれる。

その他にも、スプリッタ―でイヤホンをつないで同じ音楽を聴きながら夜のNYをデートするシーンなど、お気に入りシーンが多すぎて書ききれない。私も夫も一番好きなシーンは、ビルの屋上での録音シーンである。監督もこのシーンが一番好きだとインタビューで答えていた。ああ、やっぱりという感じ。

結局、アマゾンでサウンドトラックCDを買ってしまった。日本語版は在庫切れだったので、海外版を購入。1週間から2週間ほど楽しみに到着を待つ。

屋上の録音のシーンもよかったけど、動画貼るなら、やはりこのレヴィ―ンのライブ。


ここからはネタバレなので、畳む。







ネタバレ

以下、ネタバレ。

主人公のグレタは、恋人デイヴとはよりを戻さないと思う。映画でははっきりとは描かれていなかったけど。彼女は、最初は、売れっこミュージシャンの「彼女」として彼の傍にいれたらいいと思っていた。アシスタントのようにスタッフに珈琲を買いに行ったりもしていたし。けれども、一度彼に裏切られて別れた後、自分の楽曲でアルバムを録音して彼女は新しい道を見つけたのだと思う。デイヴのように聴衆を自分の歌で感動させられるようになりたいと思ったのだ。それがわかるのは、ラストのデイヴのライブシーンである。デイヴは彼女が作曲した曲を、彼女のアレンジのままで、グレタの前で歌う。それが、彼からの寄りを戻そうというメッセージだったかもしれない。でも、グレタは、自分の曲で感動する聴衆を見て、やはり自分でも曲を聴衆に届けたいと思ったと思う。歌は、誰かとシェアしてこそなのだ。彼女はきっと1人で音楽をやる決意を固めたのだ。だから、曲の途中でライブハウスを抜けて、吹っ切れた顔で自転車をこいでいたんだろう。
by himarayasugi2 | 2015-02-09 07:27 | エンターテインメント | Comments(0)
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