2月に入ってすぐ、ケンが後ろ脚の股関節を痛めて病院に連れて行ったことがあった。夜中に階段で移動したときになにかあった可能性がある。幸いその日のうちに痛みはなくなったようで、ケンは普通にスタスタ歩いていた。でも獣医から、もう今年で11歳になるのなら、階段の昇降は可能な限り回避するようにと言われる。1階から2階をつなぐ我が家の階段は、途中までは素通しの階段である。ケンが階段を昇るときに、素通しの部分に後ろ脚をひっかけてグネったところをたまに見る。興奮して駆け上がるときなどにやりがちである。なので、1階と2階の階段は自由にアクセスできないようにゲートを設置して、降りるときはゲートをあけて自由にさせるが、一端おりたら勝手に上れないように1階のゲートは閉めることにした。また、お留守番のときは1階におろして誰もいないときに階段昇降ができないようにゲートをすることに。そして、素通しの階段を昇らせることはよくないと考えて、室内の階段を昇るときだけ「抱っこ」をすることに決めた。
柴犬は、「抱っこ」が嫌いな子が多い。ケンも例外ではない。ケンは、自分から体を擦り付けてくるし、撫でられたリ、マッサージされたりするのは大好きなのだが、抱っこされるのだけは嫌がる。でも、ケンにはずっと元気で自分の足で歩いてほしいから、階段を上がるときだけ(室内の素通し階段だけ)は抱っこである。嫌でも慣れてもらうしかない。ほんの数秒のことだから。
今までケンは、いくつか気が進まないことを克服してきた。その一つが、お散歩から帰ってから室内に上がるときの「足拭き」である。玄関にはいつも湿らせた足拭き用タオルを置いている。外から帰ったときには、まず玄関の三和土で足を拭く。最初はとても嫌がっていたのだが、まー、慣れてくれた。足を拭くときに「ケンちゃん、足拭くよ」と声をかけているのだが、いつのまにか拭きながら「足拭くよ~♪、足拭くよ~♪」と歌うようになった。ケンも私が「足拭きの歌」を歌い出したら、「あー、はいはい」とおとなしくなり、足を代わる代わる持ち上げて拭きやすいようにしてくれる。
階段のときの抱っこも、最初は「ケンちゃん、抱っこよ」と普通に話しかけてから抱っこの手の形を見せていた。ケンを抱っこして階段を昇るときは、「ケンちゃんが上がりまーす!」とか「上に参ります!」とかできるだけ「楽しそう」にケンに聞こえるような声かけをしていた。それがいつのまにか、「ケンちゃんエレベーター♪ケンちゃんエレベーター♪」と「エレベーターの歌」の歌を歌うようになった。夫も私がいつも歌っているのを聞いて、ケンを抱っこするときは「ケンちゃんエレベーターしよか」と言ってやはり「エレベータの歌:夫バージョン」を歌いながら階段を上がってくる。今では、ケンを2階に連れていくときに「ケンちゃん、エレベーターしよか」と言えば、抱っこされる体勢になってくれて、簡単に抱っこできるようになった。抱っこ自体はやはり苦手みたいで、抱っこされている間も、「むぅ」とやや不機嫌な声を出すけど。
他にもケンと接するときに歌う歌が何曲かある。「お散歩の歌」とか「柴犬の歌」とか、特に意味もなく適当に歌っている。特にケンが苦手案件については、歌はかなり有効のような気がする。
「僕の家には、エレベーターがあるらしい、むぅ」
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