日曜日、ケン(柴犬)と芦屋浜までドライブした後、一緒にカフェへ行く。そのカフェは、店舗の扉も壁もガラス張りのお洒落なお店で、入店するとき、扉のガラス越しに中のお客さんが見えるのだ。窓際の若い女性の隣に大きな置物が見えた、と思ったとき、その置物がゆっくりと静かにこちらを向いた。
それは、大きな犬だった。ドッグカフェなので、犬がいて当たり前なのだが、こんな大きな犬を見るのは初めてで、まじまじと見つめてしまう。飼主である若い女性は、壁付けのソファに座っていて、犬はその隣で長い足を折りたたんで、そこに居るのが当然といった感じで優雅にくつろいでいた。人間以上の存在感。「大きな犬ですね。なんという種類ですか」と尋ねると、
グレートデンだと教えてくれた。ああ、これがそうか。写真などで見たことはあっても、実物を間近でみるのは初めてだった。濃いベージュの毛色で、耳の先は焦げ茶色。目は大きくて、馬の目のように優しくて賢そうな目だった。穏やかな表情で、飼主の女性と一緒に「お茶しにきているの」といった顔をしていて、その時間を楽しんでいるのがよくわかる。大きくてしなやかな体は、飼主への愛でいっぱいだった。
柴犬とか日本犬の雑種が好きな私だが、グレートデンの優雅さと優しさにはすっかり虜となった。若い女性は、ベージュのセーターに白いシャツ、黒いパンツで、黒縁のめがねをかけて、なにやら本を読んでいた。グレートデンは若い女性のことが、大好きで、世界は彼女だけで占められている様子だった。この女性とグレートデンの組み合わせは、これ以上ないくらい絵になっていた。
帰りに、飼主の女性に触ってもいいですかと尋ねたら、「どうぞ。くちゃくちゃってなでても全然平気だから」とのこと。撫でている間、グレートデンは上目遣いにじっと私を見ていて、「もう、いい?」って言っているようだった。
帰宅後、グレートデンのことを調べた。カフェで会ったグレートデンは体重が45キロだそうだが、大きいものになると100キロ近くなるらしい。足が長く、体高は、76-100センチとなる。本当に大きい。グレートデンはその大きさ故か、比較的短命の犬種らしい。10年前後だそう。グレートデンと飼主の時間が、濃密なものになるのは、その短い寿命もあるのかもしれないと、カフェで会ったグレートデンの、愛情に満ちた優しい瞳が、ずっと飼主だけを見つめている様子を思い出した。
ケンは、あとどれくらい一緒にいてくれるのだろう。もっともっと楽しい時間を作ってあげよう、足元で寝ているケンを見ながらそう思う。
(お出かけに大喜びのケン)