帰宅途中の電車の中、優先座席は男子中学生と男子高校生で占領されていた。A高校の生徒が3名、B高校が1名、C中学が2名だった。立っている人は1両で10人から15人程度で、私は優先座席の近くの扉横に立ち、壁にもたれて本を読んでいた。一駅目で停車したとき、荷物を沢山持った60代くらいの女性が優先座席に近づいて、「詰めて欲しい」と頼んでいたようだった。中学生はのろのろと席を詰めた。
暫くすると、日に焼けた、スポーツバッグを担いだ屈強な運動部所属(らしい)の男子高校生3人が、どやどやと優先座席にやってきた。A高校の生徒だ。リーダー格の一人が座っているA高の生徒達に、「おまえら、A高の生徒やろ、何優先座席に座っとるんじゃ、立て、立たんかい、そこはおまえらみたいな高校生が座る席とちゃうんや、恥ずかしいから立て、こら(巻き舌)」しかし、なかなか立たない。すると、高齢の杖をついた男性が近づいてきたので、ここぞとばかりに運動部のA校の男子生徒が「この人が座るから、どかんかー」と凄みをきかす。すると、二人が立ってその高齢の男性に席を譲る。しかし、一人は立とうとしない。するとまた運動部の高校生が、「お前、Z組やな。名前はなんていう」と尋ねる。「XXや」と答える高校生。
「XX、なんでお前は立たへんのや、理由は?」
「一人座るのなら、僕まで立つ必要がないから」「なんやと!」と、まるで書いていても、チンピラにしか聞こえない会話なのだが、本当にこんな感じで延々と立て、立たないとやっている。おまけに「XXは、Y中出身で、Y駅で降りるやろ」などとドサクサにまぎれて、個人情報を漏洩している。席を譲られた男性は、困惑した顔で双方を見つめている。B高校の生徒もC中学の生徒も恐ろしくなって、立っていた。優先座席に座っていたA高校の男子生徒が降りる駅についた。降りる男子生徒の背中に、運動部の高校生は「お前、明日しばいたるからな」とぶっそうな言葉を浴びせていた。その後優先座席は、杖の男性とさっきの60代の大荷物の女性だけが座っていた。
優先座席については、色々意見があると思う。優先座席に限らず、席を必要とする人がおれば、すぐに席を替わるのが思いやりだと思う(それがあまり実行されないから、優先座席があるのだろうけど)。誰でも体調が悪いときだってあるし。運動部の高校生は正義感からついああいう脅すような言い方になったのだろう。座っていた高校生もただ、同じ高校の生徒に言われて意地になっていただけだと思う。双方、気が合わなさそうだけれども、優先座席を意識しているのだろう、彼らなりに。