関西はひったくりが多いらしい。大阪に暫く仕事で通っていたときも、駅構内ではいつも「ひったくりに気をつけましょう、曽根崎警察署からのお知らせです」とアナウンスが流れていた。この曽根崎警察署っていうのが、おおって感じ。「ソネザキケイサツショ」っていう音が。
私も高校のとき家のすぐ近くで、すれ違いざまに原付の男にバッグを取られそうになって、すんでのところで脇道に飛び込んで逃れたことがある。母も数年前に神戸の北野で夜食事をして店をでてすぐのところで、ノートと本の入ったエコバッグをひったくられた。母は常日頃から貴重品は斜め掛けバッグにいれていたので、被害は少なくてすんだ。車からのひったくりだった。後日逮捕されたのだが、高校生だったそう。当然、何も戻ってこなかった。
先日、久しぶりに会って話をした友人からメールが来た。私と別れたあと、目の前でひったくりを目撃したのだという。若い男性が、高齢の女性の後ろから猛ダッシュで近づいて、バッグをひったくって走り去ったという。友人以外にも若い女性が2人目撃していたので、3人で携帯から110番しながら追いかけたらしい。結局若い男性の脚力についていけずあとちょっとのところで見失ったのだが、警察に特徴を細かく伝えていたので、そのひったくり犯はすぐに捕まった。バッグは無事に女性のもとへ。そこまではよかったのだが、メールの続きを読んでゲンナリしてしまった。その男性が捕まったのは、彼の妻子と合流したときだった。彼の妻は大声で、男性は無罪であることを叫んでかばっていたらしい。その場面を私の友人は、おそらく奥さんは夫のやっていることを知っていたようだと見ていた。子供の目の前で、父親が警察にひっぱってかれる情景なんて、気分のいいものではない。最後に、ちゃんとやったことを反省して真面目にやり直して欲しい、とメールに書いてあって、うんうん、と頷く。
高校生のひったくりと違って、若い父親のひったくりは、遊興費のためでなく生活費のためなのかもしれない。生活費のためのひったくりでもあかんものは、あかんのだが、休みの日に家族で出かけていて、ひったくりに及ぶ心境というのはどういったものなんだろう。しかも妻公認で。ひったくりの場所は、阪神間でも有数の瀟洒な町並みの、おしゃれなカフェやブティックが立ち並ぶところなのだ。最初は遊びに来て、つい出来心で衝動的に犯行におよんだのだろうか。それにしても高齢の女性を狙うなんて、卑怯である。
ひったくりに遭うと、暫くは道を歩くのが怖い。私の場合は追い抜かしていく原付が今でも怖いし、無意識に自分を追い抜いていった原付のナンバーは覚えようとする。原付でひったくる場合、ターゲットを追い抜かしてから、ユーターンしてすれ違いざまにひったくるのだ。
外出時は斜め掛けバッグ以外持つ気がおこらなくなる。全然おしゃれじゃないのに。