初めて大井肉店のローストビーフを食べたのは、数年前のことである。夫の実家の両親が、誰かのお家でのパーティで出されて「むちゃくちゃ美味しかった」と、わざわざ教えてくれたのがきっかけである。「あんたらも、なんかのときに食べたらええわ。美味しいよ。どうせ買うなら、1番ええやつにしーよ。中途半端はあかんよ。」と夫の母。そこまで勧めるのなら、これは美味しいに違いないと、大井のローストビーフをいつどんな言い訳を作って食べようかと考えるようになる。で、なにかで商品券をまとまった金額でいただいたときに、「大井肉店のローストビーフプロジェクト」の資金として使い切ることにしたのだ。
三宮そごうの地下の大井肉店は、別格といった佇まいである。普段こんなところですき焼きのお肉も買わない。高いし。で、お目当てのローストビーフの最高金額は100グラム二千円だった。あとは、確か500円ずつ下がっていったような。100グラム1500円でも「十二分」に私達的には「ご馳走」なのだが、ここは夫の母の「中途半端はあかん」というアドバイスにしたがって、100グラム当たり最高金額のローストビーフを4枚購入。初大井肉ローストビーフである。商品券が消える。
自宅に戻ってちょっといいワインを開けて、副菜を準備していよいよローストビーフを口にいれる。んーーーーんまい。口に入ると、トロッと溶けるような舌触り。柔らかくて、風味豊かで、ホースラディッシュをこんもりのっけて和風ソース(つけてくれる)にひたして口腔内をローストビーフで隙間なく埋めると、目や耳や鼻へローストビーフのうまみが浸透していくような感じ。悶絶するような、そして脳も喜ぶような。夫と私は無言で各自の割り当て分を完食してから、うめき声をあげながら「おいしー」と叫び、踊った。
このローストビーフを毎日食べることができたら、どうなるのだろうとふと考えた。あまりに美味しすぎて、こんなの毎日食べていたら、それこそダメな人間になっていきそうな気がする。これは、悪魔のローストビーフだ。というよりも、そう思うことでごくたまーに、食べる喜びを大切にしているのだが。なぜ、急に悪魔のローストビーフを思い出したかというと、つい先日実家の父が100グラムあたり1500円の大井のローストビーフを買ってきておすそ分けしてくれたので。久しぶりに大井のローストビーフを口にして、やっぱ1500円でも美味い、と食卓で夫とうめいていた(踊るのは2000円から)。
そういう父は、定期的に父にとっての悪魔の食べ物の買出しに三宮へ行く。父は保守的なので新しいものにすぐ飛びつくことはない。気に入った同じものを何度も何度も食べるのだ。というわけで、ヒマラヤスギ父的悪魔の食べ物リスト2010年版:登場回数の多い物をピックアップ
大井のローストビーフ(正月は奮発):これは私が紹介した。
おやつセンターの「ピロシキ」:父方の祖父母も大好きだった。
フロインドリーブのクッキーと小ミミ:定番
新生公司の焼き豚:結局1番美味しい。香ばしい。焼きたて最高!
たねやの和菓子:どれも上品で美味しい。
以上のものは全て、三宮そごうの地下で購入することができる。あああ、おなかすいた。
父はチョコレートも好きなのだが、定番チョコはまだ見つかっていない模様。父の誕生日に「美味しいチョコ」を買ってきて欲しいと言われたので、大阪にでも行って探そうかな。それでもって、ちょっともらうのだ。