人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

ヒマラヤスギ雑記

cedar2.exblog.jp

ファッション広報という仕事

昨夜のNHK『プロフェッショナル』は、日本におけるアタッシェ・ドゥ・プレスの第一人者、伊藤美恵さん。アタッシェ・ドゥ・プレスとは広報のことで、フランスでは広報の専門家として、大きな権限が与えられている職業だという。伊藤さんはファッションを中心に、企業から依頼を受けてその広報を行うのだが、かなり踏み込んで商品の売り方、広告の打ち方などの提案も行う。彼女の仕事の流儀として、合間、合間に紹介される言葉は、「思いを伝える」とか、うろ覚えだが「情熱を持って・・・」とかという感じで言葉にしてしまうと、ちょっとクサイのだが、その言葉通りに仕事をする彼女の横顔は、ひたむきさと、厳しさと、鋭さと優しさの混ざったとても魅力的なものだった。

番組中に印象的に残ったのは、彼女の「流儀」ではなく、彼女がメールは使わないと言った後に、「コミュニケーションはフェイス・トゥー・フェイス、会って直接話すか、電話で話すか」と言った場面。もしかしたら、ちょっとパソコンなどに弱いってことをおっしゃりたかったのかもしれないが、「アナログだから」と照れ笑いするも、結局人の心を動かす仕事、感情を伝染させる仕事の根本は、いくらテクノロジーが発達しても直接話し合って理解し、共感してもらうこと。テクノロジーはその意味では、ツールにすぎない。特にファッションの広報という仕事は、感覚的、直感的な視点から構築していく面も多いと思うのだが、結果は数字(売り上げ等)ではっきりとでる。インプットは感覚的でもアウトプットは合理的なものが要求される難しい仕事だと思うのだ。決して、センスだけ、感覚だけでやっていける仕事ではないし、かといって経営コンサルタントでもないので、数字をみてどうこう考える仕事でもない。町に出て、時代の空気を精度の高いアンテナで正確に捉え、そしてそれを数字に変換していくための、提言を行うものだ。日々、アンテナが鈍らないように努力を怠らないでいる必要がある。人や町、モノと「直接」対峙し、自分の目で見極めないといけないのだ。

映像を通して見える彼女は、細くて、センスがよくて、ファッショナブルで、チャーミングな女性である。が、彼女はファッションデザイナーだった30代のときに、4億円の負債を抱えて倒産した過去があった。ファッションデザイナーからファッションの裏方へと回ってがむしゃらに働き、どん底から這い上がって今があるそう。40代の終わりに、あるブランドのスーツのPRを担当し、広告の打ち方を変えただけで売り上げを一気に伸ばす経験をする。彼女は見せ方を変えることで売り上げも変ることを目の当たりにし、広報の道を究めようと仕事にのめりこんでいく。そして現在66歳。ばりばりの現役であり、いまなお日本のアタッシェ・ドゥ・プレスの第一人者である。

番組を観た感想は、とにかく伊藤さんの仕事ぶりはカッコイイということ。それから、ファッションのPRという仕事の奥深さと難しさが印象的だった。伊藤さんたちの仕事は、デザイナーというクリエーターとそのブランドを抱える会社との間に立ち、両者共に満足できるPR方法を提言することと理解した。デザイナーにとっては世界観を正確に伝えて欲しいだろうし、会社としては数字を出して欲しいだろう。広報とは、その両方の立場を理解し、長所を引き出しプレゼンテーションする職業だと思う。プレゼンのやり方を変えたら売り上げが伸びるというのは、もともと優れた商品なりデザインだからであって、そもそもPRする価値があるかどうかということも含め、伊藤さんたちは厳しく見るのだと思う。

『プロフェッショナル』に出演するその道のプロ達は、みな過去に一度は辛い目にあっている人が多い。やはりがむしゃらにやった時期は、人を大きく成長させるのだろうか。今週もとても面白かった。

追記:びっくりしたのが、実弟が高橋幸宏だということ。ええって感じだった。そうなんだ。
by himarayasugi2 | 2011-03-01 08:53 | エンターテインメント | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< ポイントカードは本当にお得なのか マトリョーシカな夢/身を挺して... >>