週末は、突然思いついて金沢へ車で行くことにした。もちろん、ケンも一緒である。夫の出張や私の発表スケジュールとかをみていたら、9月くらいに1度行っておこうとなったのだ。で、だめもとで第二希望の金沢の犬と泊れる宿に問い合わせたら、予約がとれたのだ。
その宿は、3部屋だけの小さな宿で、住宅街の中にある。大浴場とかドッグランとかはない。金沢にまた行きたいなと思っていたし、サイトの感じもよかったのでそこに決めた。金沢の中心地から車で20分くらいの海沿いの大野町というところにあり、宿の窓からは停泊している漁船が見える。すぐ近くが海で、歩いてすぐのところに醤油蔵があって、中心地のように観光客でごったがえしているというわけではないけれども、味のあるいい感じの町だった。ケンと海沿いを夕方散歩していたときに、夫も私も「この辺りは、気がいい」と同時に感じていた。夜に寝る前の散歩に出たのだが、そのときは灯台が光をくるくる回しているのがすぐ近くで見れた。実は、灯台が仕事をしている様子を生でこんなに近くでみるのは初めてで、すごくわくわくした。
(宿周辺。反対側の岸沿いにも舟がたくさん。)
宿は入ってすぐに小さな共有スペースがある。ここがフロントでもあり、廊下でもあり、ロビーでもある感じ。新聞が2,3紙と『いぬのきもち』とか、タウン誌が手に取りやすいように並べてある。すっきり、無駄がない。おみやげものも売るスペースもない。モダンな民宿かな。部屋はメゾネットで、1階がダイニングルームとトイレ、お風呂、洗面スペースで、2階にはベッド、テレビ、デスク、冷蔵庫、ソファ、がある。天井が高いので広く感じる。
(2階のベッドにひっくり返って天井を撮影。)
この宿について語るとしたら、まずは食事だと思う。通常、犬と泊れる宿というのは、「犬と泊れる宿のわりには」、というようにちょっと枕詞がどうしてもつくのだけれども、ここは違った。ここは、すっごく美味しい料理宿なのに「犬と泊れる」のだ。久しぶりに、美味しい魚介類を堪能できた。以下、夕飯、そして翌朝の朝食と続く。
食事は個室のダイニングでいただく。まずは、冷たい蕪のスープと、カレイとタコのカルパッチョである。蕪のスープはなめらかで、蕪の味が濃くて、何杯でも飲めそうな美味しさだった。カルパッチョな素材が新鮮で、ぷりぷりで、味付けも素材の味を殺さないように、最小限の塩とオリーブオイルだけだと思う。よくある、酸味のききすぎたドレッシングとかをどっさりかけてごまかしているのとは違うのだ。もうこの一皿だけで、夫と私の期待は異様に高まった。
(カルパッチョと蕪の冷たいスープ)
次は、能登豚と厚揚げの中華風の炊き合わせ。これも、薄味で丁寧に作っていて気どっていなくて美味しい。家庭の味だけど、作れそうでなかなか作れない味なのだ。
で、その次が毛ガニの酒蒸しと、甘エビ。宿の人の説明によると、この毛ガニは、カレイの漁のときにたまに網にひっかかるものらしくて、今の時期に獲れたものは金沢市内だけで消費されるという。要は、県外もしくは市外には出荷されず地元の人たちが楽しむ毛ガニだとか。蟹は何十杯規模ならゆでても逃げたうまみがまた身に戻るけれども、2,3杯をゆでると、うまみがそのまま逃げてしまうから、少量ロットを調理する場合は、酒蒸しがおすすめだとか。味がめっちゃ濃くて、超美味しいのだ。蟹味噌も絶品。夫としばし無言で身をほじりまくる。で、今朝いいのがあったから、これもサービスです、と甘エビもつけてくれる。この甘エビが、口にいれたらエビクリームのように「とろん」と溶けてゆくのだ。本当に甘い。スーパーの細い、細い、紐みたいな甘エビとは完全に別物だった。お醤油をほんのちょっとだけつけていただく。魚介類は、収穫してから口に入るまでの時間が短いほうが美味しいですよ、と宿の方が笑顔で言う。ここで食べるから美味しいのだ。シンプルで本当に美味しかった。
(写真があまり美味しそうに見えないところが悔しい。実物はめっさ美味でした。毛ガニ、甘エビ、毛ガニを食べ終わったときのお皿がきれいなのでパチリ。九谷焼?)
毛ガニと甘エビで、お腹がパンパンになったけれども、次がこの近くに停泊している舟でも獲る、「ガンド」と呼ばれるお魚のソテーである。これはブリのひとつ手前の大きさで、5、6キロくらいなので、多分「ハマチ」だと思う。味噌ベースで味つけていて、ネギとシソを沢山のせていただく。正直、お腹いっぱいだったけどなんとか完食す。美味しい。ブリのあっさりめという感じかな。この後、ご飯と甘エビの殻で出汁をとったみそ汁がでて、デザートなんだけれども、さすがにデザートは、おそらくゼリーとかシャーベットとか、出来あいっぽいのが並ぶだろうと思っていたら、違った。全然違った。
(ハマチ、ご飯、味噌汁)
デザートは、宿の人が焼いた、シュークリームにコーヒーだった。自家製のシュークリームかー。甘さ控えめで、中のカスタードも本格的で、皮も香ばしくてかりかりで洗練された味。美味しかった。コーヒーもすごく美味しい。あと、夫がすごく気に入ったのが、ここの飲み物なんでも持ち込みOKシステムだった。チェックインのときに、お酒とか飲みたいものがあったら、醤油蔵界隈にある酒屋で好きな地酒を買ってもらってそれを持ち込んでもらってもいいですよ、と言われたのだ。早速、夫は教えてもらった酒屋で、加賀の地酒(純米吟醸美味しかったらしい)とビールを購入して、夕食時に飲んでいた。持ち込み料などとらないのだ。宿でも飲み物はあるけれども、「種類が少ないから、お客様の好きなものを飲んでもらったらいいので」とのことだった。夫、大満足である。
(デザートのシュークリームとコーヒー。シュークリームは、普通にケーキ屋さんで売っているレギュラーサイズ。本格的だった。)
食後はNHKの高倉健特集をソファーでだらだらしながら視聴して、寝る。そして翌朝、朝食を見てびっくりする。
以下、長すぎるので折りたたむ。
朝食は、なんと、海鮮丼だった。朝から海鮮丼!さわら、ホタテガイ、カワハギの新鮮なお刺身がどーんと載っていた。それと、温泉卵と、オクラの胡麻和えと、おからと、あおさの味噌汁にデザートが梨である。お茶はもしかしたら、丸八製茶の加賀棒茶ではないかな。すごく美味しいし、あそこのお茶だと思うんだけど。オクラとかおからも味付けがとにかくあっさりとしていて美味しいし、海鮮丼も、つけだれが控えめで、足りない分は自分でちょっと醤油をかけるシステムになっていた。ほとんどかけなくてもよかった。味つけがあっさりしているので、くどくないし、お魚が美味しい。ものすごいボリュームだったけど、ぺろりと食べて、結局その日は、3時過ぎまで全くお腹がすかなかった。3時すぎにSAでおにぎりひとつ食べたけど、その後も夜もお腹あまりすかなかった。
(まさかの朝から海鮮丼!ボリュームすごい。)
(オクラ、オカラ、梨、ケンには梨だけちょこっとあげた)
食べたものだけでここまでいってしまったため、多分、続く。
(やっとここでケン先生登場。人間たちの夕食を羨ましそうに見つめているのだ。)「ボク、ツマンナイ」