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ヒマラヤスギ雑記

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紙が破れるほどの元気いっぱい

愛読しているブログの管理者の方に、庄野潤三の『貝がらと海の音』がお勧めだとうかがい、やっと先日手に入れることができた。私の行動範囲内の大型書店では全て在庫がなく(他の庄野さんの作品はあるのに)、大学の図書館で検索してもこの作品はなく、別の大型書店の店員に訊ねたら、アマゾンの画面を検索してくれて「ここに中古本がありますけど」って言われる(え?)。先日、アマゾンの中古本市場で『貝がら』をやっと購入する。

まだ途中なのだけど、ここまで読んで書き留めたいことがいくつかあったので、ちょっと記録。ウィキによると『貝がら』は、1996年に出版されている。庄野さんが70歳に入ったころの日常をベースにフィクションを書いたのか、すこし脚色して書いた私小説なのかはわからないけど、庄野さんの穏やかな日常と重なる箇所が多いだろう。老夫婦の、穏やかで、温かく、幸せに満ちた、でもなんてことのない日々の記録である。読み始めて最初に、いいなぁと思ったのは、主人公のお孫さんのフーちゃんのお習字の話である。このフーちゃんは、無口な子なんだけど、手紙を書くのが好きで、一生懸命に嬉しい、楽しい、ありがとう、を伝える。そういうフーちゃんらしさを、主人公のおじいちゃんは、どんな小さなことでも見逃さないで、それを丁寧にすくいあげる。

フーちゃんはお習字のおけいこが好きで、楽しみに通っていて、賞をもらうほどの腕前なのだ。おじいちゃんはフーちゃんが書いた作品を何枚か持っていて、中でも「かに」がとてもいいという。みんないいけど、「かに」が「のびのびしていて、力強い。横に『小二 ふみこ』と書いてある。この『ふみこ』もいい。……中略……「かに」を見ると、力が入って、紙が少しやぶれかかっているところがある。『いい字だなあ』『フーちゃん、本当にいい字、書きますね』と妻と二人で感心し、よろこび合った。」(作品から引用)

ここを読んで、ついネットでブログを読む感覚で、フーちゃんの「かに」の写真があることを一瞬期待してしまった。もちろん写真などはない。でも庄野さんの「かに」の描写だけで、紙が破れるほどに勢いのある子供らしい字で大きく「かに」と書いてある半紙がふっと見えたような気がした。私がこの箇所が好きなのは、想像するのが楽しくなるからだと思う。庄野さんの文章は、みんなそうで、お散歩から戻ったときに奥様が淹れてくれる冷たい麦茶とか、ピオーネとか、長女の誕生祝いの土瓶蒸しとか、わざわざ見に行ったジンベエザメとか、全て文字だけなのだけど、画像がないからこそ余計に鮮明にイメージできる。

庭にバラのつぼみがついたことを妻と喜び合って、子供や孫に贈る本を選び、そして孫からの手紙や葉書を大事に、大事にする。お弁当の描写も美味しそう。普通の日常生活に隠れたキラキラをいっぱい見つけて、それを喜ぶ素敵な毎日である。こういう風に老後を過ごせたらなぁと思う。平凡で普通な日常こそ大切だと。残りも大切に読もう。

大人になったフーちゃんは、おじいちゃんが「かに」をこんなにまで好きだったことを知ったら、どれほど喜ぶだろう、とか、そういうことまでつい考えて、ちょっと感情移入ができてしまう、そういう本。

自分用メモ:
おおおおお、ちょっとまぢでがんばらなくてはいかん。でも7月いっぱいは遊ぶ!

テレビから:
たけしの家庭の医学みたいなのを見る。アトピー性皮膚炎の発症はストレスと関係があるとのこと。友人が大人になって職場のストレスからアトピーを発症したのを間近で見ているので、これは納得である。とういうか、ストレスってほんとにあらゆる病気のトリガーになりうると思う。
by himarayasugi2 | 2013-07-24 08:52 | 本など | Comments(0)
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