浅田真央さんの引退記者会見をライブで見た。真っ白のブラウスにジャケットに、黒のスカートで、颯爽と登壇する。いっせいにフラッシュがたかれる。ものすごい報道陣の数である。あとでネットでスチールカメラ、テレビカメラ、記者を合わせて430人集まったことを知る。
会見の真央さんは、同じような質問が続いても、笑顔で丁寧に答えていて、そういうところがほんとに誠実だと思う。また、予定調和的な答えを期待するような「いまいちな」質問に対してあっさりとかわしたところもよかった。
「生まれ変わってもフィギュアスケートをやりたいか」という質問に対して、「やり切ったからもうスケートはいい、食べることが好きだから、ケーキ屋さんとか…」と笑顔で返した。また、「過去に戻れるなら、いつの自分になんといって声をかけてやりたいか」という質問に対しても、「過去に戻らないから」とニッコリ答えていた。質問者に恥をかかすことなく、終始和やかな受け答えをしていた。最後に今後について「不安は全くない、ただ目の前にある道を進んでいくのみ」と言い切っていた。
彼女は、自分の言葉で語っていたし、とても自然体だった。なにも狙っていない。素直に思ったことを述べているだけ。マスコミ受けなんて、微塵も考えていない。今までずーっとそうしてきて、一度も失言がない。ほんとにすごいことだと思う。また、彼女はファンからの応援に感謝し、ファンを大切にしてきた一方で、自分がどれほど愛されているかについては、よい意味で無自覚だったんじゃないかなと思う。おもねらない。だからより一層彼女に惹きつけられる。
会見で印象的だったのは、何度も「自分で決めたことだから、」「最後は自分で決めました」という言葉だ。これは、他のインタビューでも何度か聞いたことがある。あと、最後の挨拶をするとき、途中で涙があふれそうになって、くるんとカメラに背中を向けて涙をぬぐった場面が、映画みたいだった。こんな仕種、狙ってできるものではない。もう一度カメラの前を向いたとき、うるんだ目で、晴れやかな笑顔を見せてくれて、見ているこっちはもらい泣き。美しい引退会見だった。颯爽としていて、風のような人だった。お疲れさまでした。
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