ケンのお散歩でたまに長屋型アパートの前を通ることがある。古い建物で、私が子供のころに今の場所に引っ越してきたときからある。1階の各部屋は、通りに面していて、玄関開けたらすぐ公道である。1階の居室の窓もすぐ道に面している。ほとんどの部屋は、同じ人が長く暮らしているようで、必然的に住人は高齢の方が多くなっている。

ある1階の部屋に男性が一人で暮らしている。年齢は75歳から80歳くらい。この人はいつも道路側の部屋の窓際に座っている。アパートからかなり離れた場所からでも聞こえるくらい大きな音でラジオをつけている。窓からいつも外を見ている。私はこの長屋アパートの他の住人の顔は全然知らないのだが、この男性だけは外で見かけてもわかる。

何年か前の暑い夏の夕方、ケンとそのアパートの前を通りかかったとき、その男性の部屋の前に中年の男性が2人立っていて、住人の男性と話をしていた。中年の男性らは、どうやら役所かどこかから来た人のようで、エアコンを設置しているかどうかを訊ねていた。もしかしたら、独居の高齢者世帯を回って状況確認をしているところだったのかもしれない。「今は、エアコンも性能がよくて、省電力ですし、暑いときはエアコンがあったほうが安全です」みたいなことを話しているのが聞こえた。それに対して、住人男性は、「いらん、ほっといてくれ」といった対応で、大声で怒鳴っていたし、取りつく島もないといった感じだった。

そのときの頑固で、偏屈で、融通のきかない感じが印象に残っている。そして、毎年夏になるとその男性の部屋にエアコンがついたのかどうか気になって室外機を探してしまう。今年の夏もこの男性はエアコンなしだった。なんとか夏は越えられたみたい。

その男性は、窓際に座っていつも前を通る人を「監視」している。以前、私とケンの前を歩いていた犬連れの男性が、その男性のアパートの前でたまたま立ち止まっただけで、窓から身を乗り出して、「オシッコさせんな、立ち止まるな、この植物が枯れたのは、お前の犬がオシッコかけたからだろう」とすごい剣幕でののしっているのを見かけた。完全に濡れ衣である。もちろん、ののしられた犬連れの男性は、オシッコなんてさせていないし、枯れた植物は、勝手に枯れたのだと思う。オシッコが届くような場所になかったから。でも、まぁ、そんな感じで犬の散歩の人が立ち止まると、必ずそうやってかみついているというのは、すぐに私にもわかった。

私だけでなく、犬連れの人はみな男性の住んでいるアパートの前になると、犬を引っ張って駆け抜けるようになった。その前で立ち話をする人もいない。

昨日、ケンと夕方に男性のアパートの近くを通りかかったとき、沢山の雀が男性の部屋の前の道にいるのが見えた。見ると、男性が部屋の窓から、パンをちぎって雀に投げているのだ。沢山雀がいるから、少し前からパンをやるようになったのだと思う。おかしいのは、手だけをさっと出して、パンを投げたらすぐひっこめるところ。いつも人に苦情を言うときは、窓から身を乗り出しているのに。パンを取り合う雀を、室内から静かに見つめている男性の目だけが見えた。


草屋根の上のコスモスが、満開に近づいている。白いコスモスも咲き出した!すごくきれい。今度写真とろう。 








[PR]
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by himarayasugi2 | 2017-09-25 11:38 | 雑感 | Comments(0)