ちょっとしたご縁があって、ここに行ってきた。私は人生2度目、夫は人生初である。
私が初めて行ったのは、小さい頃だったから、もう「行った」ことしか覚えていないので、実質私にとっても初めての宝塚歌劇といってもいいと思う。私の周囲には、宝塚にハマった人が定期的に現れる。結婚してすぐのころは、夫の知り合いの新潟在住の熱烈な涼風真世ファンの人にBSの宝塚の番組録画を頼まれたこともあった。夫が録画できていないと勘違いしてしまい、そう伝えたら、号泣されたということもあり(あとで録画できていたことが判明して、すぐに誤解を解いたが)、熱狂的なファンってすごいんだと思っていた。研究室の先輩や後輩にも筋金入りのヅカファンは多い。どういう世界なのかなとずっと不思議だった。で、今回行ってきたのだ。
もし、宝塚歌劇に行ったことがなくて、一度くらいは観劇しようかなと迷っている方がおられたら、行くべきだとお伝えしたい。宝塚歌劇は、宝塚南口を降り立ったときから始まっている。その空気とか人とかもひっくるめて「宝塚」って感じ。劇場に近づくにつれて、観劇ツアーの人の塊とか、当日券に並ぶ人々とかの姿が視界に入り、劇場ホールは、すごい人でごった返している。お目当てのスターの名前を書いた大きなカードを掲げた人がいて、そこにも人が集まる(後できいたら、募金みたいなのもやっているとか)。ここは、渋谷の交差点かというくらいの人だかりであった。圧倒される。
満席。ステージは、第一部の歌劇と30分の休憩を挟んで第二部がショーという構成である。30分の休憩では、「ルマン」のサンドイッチを食べる。「ルマン」は宝塚にあるサンドイッチ店で、私も子供のころから知っている。中高のイベント時とかに配られた記憶がある。みんな知っていると思っていたら、夫は「ルマン」のサンドイッチを初めて食べたという。劇場内でも「ルマン」のサンドイッチは販売されていて、みんな食べていた。このサンドイッチ、美味しいのだ。なんとここでは、幕間に客席で食事をしてもいいのだ。
(開演前。このあと携帯の電源はオフに。後ろの後ろの席である。でも、意外と見えるのだ)
歌劇とショーについて:
なんと、生演奏である。オーケストラピットがあって、そこで演者の動きとぴたりと合わせた演奏がある。なんという贅沢。演奏もとてもよい。男役は、どこまでも男にしか見えない。ステージのゴージャスなこと。大きなステージは、美しくて、凝っていて、こんなにすごいの?ってびっくりする。舞台の上で、とにかく歌って、踊って、動き回って、全く息も切れないし、動きながら(踊りながら)歌うのってとても難しいのに、難なくこなす。ショーでは、ラインダンスとフィナーレの階段を楽しみにしていた。ラインダンス、とってもきれいに揃っていた。大階段から降りてくる人は背負っている羽根の大きさが、その人の「スター度」を表すとレクチャーを受けていたので、羽根に注目する。そもそも羽根が背中にある人は一部の人で、その中でも大・中・小とサイズがある。中サイズの羽根でもすでに巨大で、夫も私も「これが、大サイズなんだ」と思った次に、予想をはるかに上回る巨大な羽根を背負った人が下りてきて、びっくりする。後ろにモフモフが沢山ついていて、見るからに重そうなのに、軽やかに大階段を下りてきた。ミラーボールがキラキラと会場の壁やら床に光を飛ばし、なんか夢の世界のようだった。
(休憩が終わって、第二部のショーが始まる直前。この後、また携帯をオフに。)
どういうジャンルの音楽でもそれに合わせて歌って踊れる団員に、どんなジャンルの音楽でも難なく演奏してしまうオケ。演目も、洋物も和ものも、漫画原作もオリジナル脚本もなんでもこなす。この日の演目は雪組の『凱旋門』で、悲しい話だったけど、面白くてよかった。
夫と帰りに話していたのだけど、拍手のタイミングがよくわからない。なにか独特のルールにのっとって拍手しているみたいなのだ。ライブとかだと曲が終わったら普通に拍手するのだけど、どうやらそういう単純なものではないみたい。きっと暗黙のルールがあるのだろう。最前列で観劇すると、演者の汗などがかかるらしい。大相撲の砂かぶり席みたい。
様式美という言葉が頭に浮かんだ。華やかな歌劇やショーだけでなく、当日券に並ぶ列も、ルマンのサンドイッチも、場内の売店の華やかな感じも、団員の名前を書いたカードを掲げるファンも、ロビーの赤い絨毯敷きの階段にピアノに、街でみかける宝塚歌劇に関するあらゆるもの(ペット用品店では、男役のブロマイドが飾ってあった、音楽学校に関する説明板が道に掲示されていたり)が、「宝塚歌劇」という世界の一部なのだ。こういうのは、DVDでは伝わらない。
ハマったとはいかないにしても、ハマった人の気持ちはよくわかる。現実逃避というか、舞台が終わるまでは夢の国にいるような感じだった。チケット入手はかなり困難みたいなので、次いつ行けるのかわからないけど、またチャンスがあったら。
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