久しぶりのゼミの集まりと飲み会があった。今回の店は京都某所のおばんざいの店である。京都で集まる場合は、いつもこのお店なのだ。京都在住のゼミ先生のお気に入りで、学生相手の居酒屋とは一線を画す店である。リーズナブルでおばんざいも美味しいし、お酒もたくさんあって、店の雰囲気もよく、常連さんでいつもにぎわっている。うちのゼミではここのお酒がなくなるまで一次会は居座ることが多いらしい。京都での飲み会のときは9時になったら私は先に失礼するのだが、昨夜は話に夢中になってなんと10時半まで時間に気がつかなかった。慌ててお先に失礼する。他の人たちはもうちょっと飲んでから、二次会に行ったと思う。だから帰宅は深夜になってしまった。
帰りの電車は、金曜の夜に飲んだサラリーマンでいっぱいだった。京都から電車が西に移動するにつれて、車内は空いてくる。私が座っている席から出入り口のところで立っているサラリーマンがやっと見える。その人は、身長175センチくらい、わりとすらっとしていて、年齢は45歳から50歳くらいで、目鼻立ちのはっきりとした彫の深い男性である。黒いウールのコートに、普通のスーツ、黒のナイロンのよくあるブリーフケースを手にしていて、こぎれいでどちらかといえばカッコいいタイプである。その人は一人なんだけど、さっきまで楽しい飲み会に参加していたようで、口角がきゅっとあがってニコニコとした表情だった。暫くすると、片足を一歩前にしては、また戻すといった動作を繰り返し始めたので、「あ、この人ちょっと酔っぱらっていて、しかもトイレに行きたいとか?」とちょっと考えた。
すると、何度か片足戻しを繰り返したあと、次にこの男性がとった行為は、片手は胸にひっつけて、片手は体の前に押し出し(地面と片腕は平行になる)て、いきなり車内でフィギュア選手みたいに、一回転ジャンプをするというものだった。車内の進行方向に沿って東から西へ一回転ジャンプをして、今度は西から東へと一回転ジャンプをして戻るといったことを数秒置きに繰り返す。完全に酔っぱらっている。シラフだったら「かっこいい部長」に見えないことはない男性が、酔って車内で跳びながら回るってどうなんだろう。シュール。車内には人が少なくなっていて、一人で回転ジャンプをニコニコしながらする男性は注目の的で、なにげに乗客はスマホを取り出して操作を開始する。メールとか、ツイッターとかフェイスブックとかで車内で回転する男性について報告しているのだろうか。お勤めの人が解放感に浸れる金曜の深夜の電車ってなかなか面白い。
飲み会での話:
私は学生のころから、山手幹線は「山幹」(ヤマカン)と呼び、国道二号線は「二国」(ニコク)と呼び、国道43号線は「よんさん」と呼んでいた。いずれもイントネーションが極めて重要で、イントネーションが違うとなんのことかわからなくなる。が、他の人たちは国道二号線と43号線の省略の仕方は聞いたことがないという。この呼び名は私の学生時代からの周囲の人や夫も言うので、関西では標準呼称だと思っていたんだけど、ちがうんや。「世代の違いとちゃいますか」って言われてしまう。
ゼミ先生はサッカーが大好きで、よくサッカーにたとえて話をする。昨夜は、うちのゼミのメンバーをサッカーのポジションにたとえたらという展開となる。ツートップは研究員の治外法権ペア、KさんとSさん(おそろしいシュウロン伝説ホルダーである)で、トップ下は他大学と連携してシンポジウムなども開催したりと、大活躍の研究員Aさんだそう。これはよくわかる。カメコは「意表をつくサイド」らしくて、みな大笑い。で、「ヒマラヤスギさんはね、ボランチやってもらおう」とおっしゃる。よくわからず。帰宅後夫にきいたら「守備的MFかなぁ。わりと堅いと思われてるんとちゃうんか」とのこと。守りにばかり偏っている普段の私が見透かされているような。ちなみに先生は監督で、キーパーはいないらしい。
ゼミ先生は、芦屋に用事があるときに帰りにビゴ本店でバゲットを買って帰るそう。先生によると、京都にも美味しいパン屋さんはあるけど、やっぱり阪神間はパンに対する住民の意識が違うという。それは、ビゴ本店はバゲットの焼きあがり時間が朝から始まって、最後が午後4時らしくて、午後4時ってことは夕食用のバゲットを意識して設定した焼きあがり時間であり、そういう需要があるからだという。京都のパン屋は個人がやっているところが多く、午後4時にバゲットが焼きあがるというお店は先生の知る限りではないんじゃないかということ。なるほど。